
ライン入力とは?オーディオ信号の基本を理解しよう
「ライン入力」という言葉を、オーディオ機器や音楽制作機材で目にしたことはありませんか?なんとなく知っているけれど、マイク入力と何が違うのか、どんな時に使うのか、正確に説明できる人は少ないかもしれません。
この記事では、音楽やオーディオを扱う上で欠かせない「ライン入力」の基本から、マイク入力との違い、具体的な使い方まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。
ライン入力の基本的な役割
ライン入力とは、オーディオ機器間で音声信号を受け渡すための入力端子のことです。その最大の特徴は、「ラインレベル」という比較的に大きな音声信号を扱うために設計されている点にあります。
CDプレーヤー、スマートフォン、シンセサイザー、ミキサーなど、多くのオーディオ機器は、この「ラインレベル」で音声信号を出力します。ライン入力は、これらの機器から出力された信号を、劣化させることなく適切に受け取るための入り口なのです。
「ラインレベル」という信号の強さが鍵
オーディオ信号には、その電圧の大きさによっていくつかの「レベル(規格)」があります。代表的なものは以下の通りです。
- マイクレベル: マイクが拾った非常に微弱な信号。そのままでは扱えないため、プリアンプで増幅する必要があります。
- インストゥルメントレベル(Hi-Z): エレキギターやベースなどの楽器から出力される信号。マイクレベルよりは大きいですが、ラインレベルよりは小さいです。
- ラインレベル: オーディオ機器間でやり取りされる標準的な信号。マイクレベルの約100〜1000倍の強さがあります。
ライン入力は、この「ラインレベル」の信号を最適に受け取れるように設計されています。もし、ここにマイクレベルの微弱な信号を入力しても、音が小さすぎてほとんど聞こえません。
ライン入力端子の主な形状
ライン入力に使われる端子(ジャック)には、いくつかの種類があります。代表的なものを覚えておきましょう。
- RCA端子(ピンジャック): 赤と白のペアで使われることが多く、家庭用のオーディオ機器(CDプレーヤー、アンプなど)で一般的に見られます。
- TS/TRSフォーン端子: 楽器やプロ向けの音響機材でよく使われる、太いプラグです。TSはアンバランス接続、TRSはバランス接続に対応しています。
- 3.5mmミニプラグ(ステレオミニ): スマートフォンやパソコン、ポータブルオーディオプレーヤーでおなじみの端子です。
どの端子が使われているかは機器によって異なりますが、役割は同じ「ラインレベルの信号を入力する」ことです。
ライン入力とマイク入力の決定的な違い
ライン入力とマイク入力は、見た目が同じフォーン端子であっても、内部の回路が全く異なります。両者の違いを正しく理解しないと、音が歪んだり、ノイズの原因になったり、最悪の場合は機器の故障に繋がる可能性もあります。
違い①:対応する信号レベル
これが最も本質的な違いです。前述の通り、入力できる信号の大きさが全く異なります。
- ライン入力: ラインレベル(大きい信号)を扱う。プリアンプは内蔵されていないか、増幅率が非常に低い。
- マイク入力: マイクレベル(小さい信号)を扱う。微弱な信号をラインレベルまで増幅するための「マイクプリアンプ」が内蔵されている。
マイク入力にラインレベルの大きな信号を入力すると、信号が大きすぎてプリアンプで処理しきれず、音が激しく歪んでしまいます(音割れ)。逆に、ライン入力にマイクを接続しても、信号が小さすぎて音がほとんど聞こえません。
違い②:インピーダンス(抵抗値)
インピーダンスとは、電気信号の流れにくさを示す値です。これも両者で大きく異なります。
- ライン入力: インピーダンスが高い(数kΩ〜数十kΩ)。
- マイク入力: インピーダンスが低い(数百Ω〜数kΩ)。
音響機器では「ロー出しハイ受け」という原則があり、出力側のインピーダンスが低く、入力側のインピーダンスが高い状態が理想とされています。それぞれの入力端子は、接続される機器(マイクやライン出力機器)に合わせて最適なインピーダンスに設計されているのです。
違い③:ファンタム電源の有無
コンデンサーマイクなど、動作に電源が必要なマイクがあります。この電源を供給する機能が「ファンタム電源(+48V)」です。
- ライン入力: ファンタム電源を供給する機能はない。
- マイク入力: ファンタム電源を供給できるものが多い。
誤ってファンタム電源がONになっているマイク入力に、ダイナミックマイクや一部のライン出力機器を接続すると、故障の原因になることがあるため注意が必要です。
ライン入力はどんな時に使う?具体的な使用例
では、実際にどのような場面でライン入力が活躍するのでしょうか。具体的な使用例を見ていきましょう。
ケース1:シンセサイザーやキーボードの接続
シンセサイザーやステージピアノ、電子ドラムなどの電子楽器は、ラインレベルで音声を出力します。これらの楽器の音をミキサーやオーディオインターフェースに入力する際には、ライン入力端子に接続するのが正解です。
ケース2:CDプレーヤーやスマホの音声をミキサーに入力
CDプレーヤーやスマートフォンのイヤホンジャックから出力される音声もラインレベルです。これらの音源をPAミキサーやDJミキサーに取り込んで再生する場合、ライン入力を使用します。
ケース3:ミキサーからオーディオインターフェースへの接続
複数のマイクや楽器の音をミキサーでまとめた後、その音をパソコンで録音したい場合があります。この時、ミキサーのメインアウト(ライン出力)からオーディオインターフェースのライン入力へ接続します。
ケース4:外部エフェクターの接続
リバーブやコンプレッサーなどの外部エフェクター(アウトボード)を接続する際にもライン入力・出力が使われます。ミキサーの「インサート端子」や「センド・リターン端子」を活用して、特定の音にエフェクトをかけることができます。
ライン入力の正しい接続方法と注意点
ライン入力を正しく活用するための、具体的な接続方法と注意点を解説します。
適切なケーブルを選ぶ
ライン接続には主に「アンバランス接続」と「バランス接続」の2種類があります。
- アンバランス接続: TSフォーンケーブルやRCAケーブルを使用。ケーブルが長くなるとノイズの影響を受けやすい。短い距離(数メートル以内)での接続に向いています。
- バランス接続: TRSフォーンケーブルやXLRケーブル(マイクケーブル)を使用。ノイズに強い構造になっており、長い距離でも音質を保ったまま信号を伝送できます。
接続する機器同士がどちらの接続に対応しているかを確認し、適切なケーブルを選びましょう。
ゲイン(入力レベル)を調整する
機器を接続したら、まずゲイン(入力レベル)を適切に調整することが重要です。ゲインとは、入力された信号をどれくらい増幅するかを決めるつまみのことです。
- 接続した機器から、通常再生するのと同じくらいの大きさで音を出します。
- 入力側の機器(ミキサーなど)のレベルメーターを見ながら、ゲインのつまみをゆっくり上げていきます。
- 音がピーク(赤色のランプ)に達して歪まない範囲で、できるだけ大きく入力されるように調整します。一般的に、ピークの少し手前(黄色のランプが時々点灯する程度)が適切です。
この調整を怠ると、音が小さすぎたり、逆に大きすぎて歪んだりしてしまいます。
よくあるトラブルと対処法
- 音が出ない: ケーブルが正しく接続されているか、断線していないかを確認しましょう。また、接続先のチャンネルのフェーダーやボリュームが上がっているか、ミュートになっていないかもチェックします。
- 音が割れる・歪む: 入力ゲインが高すぎる可能性があります。ゲインを下げて適正なレベルに調整してください。また、マイク入力に誤って接続していないかも確認しましょう。
- 「ジー」「ブーン」というノイズが乗る: ケーブルの接触不良や、電源周りの問題(グラウンドループ)が考えられます。一度ケーブルを抜き差ししてみたり、接続する機器の電源を別のコンセントから取ってみたりすると改善することがあります。
ライン入力に関するQ&A
最後に、ライン入力に関してよくある質問にお答えします。
Q. ギターはライン入力に直接繋いでもいい?
**A.** いいえ、直接繋ぐのはおすすめできません。エレキギターやベースの信号は「インストゥルメントレベル(Hi-Z)」であり、ライン入力とはインピーダンスが異なるためです。直接ライン入力に接続すると、高音域がこもった元気のない音になってしまいます。
ギターを接続する場合は、オーディオインターフェースの「Hi-Z入力」や「INST入力」と書かれた端子、もしくは「DI(ダイレクトボックス)」という機材を通してライン入力に接続してください。
Q. ライン出力とヘッドホン出力の違いは?
**A.** どちらもラインレベルに近い信号が出力されますが、大きな違いは「インピーダンス」と「駆動能力」です。ヘッドホン出力は、インピーダンスが低いヘッドホンを直接駆動させるための小さなアンプが内蔵されています。一方、ライン出力は次の機器のライン入力(インピーダンスが高い)に接続されることを前提としています。緊急時以外は、ライン接続にヘッドホン出力を使うのは避けましょう。音質が変化したり、ノイズの原因になったりすることがあります。
Q. パソコンのライン入力端子はどこにある?
**A.** デスクトップパソコンの多くには、背面のサウンドカード部分に3.5mmミニジャックの端子が複数並んでいます。一般的に、**水色**の端子がライン入力、**ピンク色**がマイク入力、**緑色**がライン出力(スピーカー/ヘッドホン)です。ノートパソコンでは省略されていることも多いですが、マイク入力とヘッドホン出力が一体になった「ヘッドセット端子」が搭載されている場合があります。
まとめ
ライン入力とは、CDプレーヤーやシンセサイザーなど、様々なオーディオ機器から出力される「ラインレベル」の信号を受け取るための重要な入力端子です。微弱な信号を増幅するマイク入力とは役割が全く異なり、信号レベルやインピーダンスに大きな違いがあります。
この違いを正しく理解し、機材や目的に合わせて適切な端子とケーブルを選び、ゲインを調整することで、クリアで高音質なサウンドを得ることができます。本記事を参考に、ライン入力をマスターして、音楽制作やオーディオライフをさらに楽しんでください。

コメント